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構成の味わい深い歌を選びました。
くわりんたうかじつて聴力たしかめる内なる音は沸点をもつ
池谷しげみ
貰い来し家具のカタログ朝焼けと海のページに椅子は置かれて
辻 聡之
交差点ごとに「ひだり」とつぶやきてハンドルを切る梅雨の故郷を
安永有希
〈わたしたちは魚のよう〉とわがうちに聖歌ひびきぬ声もまたさかな
酒田 現
プール・サイドへしぶく水。眠りとは、遠くの町に辿り着くこと
上田優士
まんまるの鳩のポーズのわが映るヨガスタジオの鏡の遠く
光野律子
線香はみるみる灰になってゆく風吹くみかん畑の墓に
東 洋子
雨吸ひしさくら花びら掃き出しの難儀を語る用務員某
横田博行
紫陽花の裏に薄日の差しそめて教へ通りに腰曲げてみる
白倉みづゑ
吾は耳をずいぶん落としてきたやうだふりむくところ蝉の穴、穴
渡辺松男
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