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ひつつめに髪結ひて年齢を意識せし日より四十八年われと柿の木
馬場あき子
むかし友よりもらひし細きネックレス 友は忘れて我は想ふも
草田照子
雨しづしづ隠元豆の白い花かういふ小花に祖母が浮かびぬ
渡辺松男
病気だった時間にいまも甘えてる花びらはわれを追いこしてゆく
古田香里
茹であげた白アスパラは重そうに曲がって彼の指思い出す
溝口シュテルツ真帆
「好きな色はピンク」と少女は背をのばす「吾は水色」とはじめての噓
中野富美子
ここは湖(うみ)十四万の死者たちとともに過ごせば拡がる波紋
かつたにゆうこ
人生を閉ずるにあらず切り開く覚悟の春呼ぶ老人ホーム
内田いく子
もうどこへも行けぬスニーカーこちら向く閉ぢた靴店の西陽のなかに
池谷しげみ
いびつなるわれの心も蝌蚪の子もこころの容量(うつは)あふれて春だ
山田公子
※( )内は前の語句のルビ
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