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初晴やヴーヴ・クリコの栓を抜く祈りはとほしシッダールタよ
高崎 淳子
まにあわず王子の腕(かいな)は白鳥のつばさのままでおわるおはなし
古田香里
紅の羽毛布団が家に来る 葛原妙子の紋章を思う
水沼朔太郎
濡れ女に踵を掴まれる如し 署名の記事に誤りを認む
宮部堂郎
知らぬ人のかたみ買ひたる昼さがりちひさくてよくうごくこまどり
齋藤英明
すり硝子のヤモリは白い影絵だった 宿題が終わらない夜に
浦 綾乃
背表紙にシリアルナンバー58わたしの春をよろしく手帳
看做しみず
かりそめのひと日は終わり月のぼる少し熟れたる檸檬の色して
今野祐一
撫づれども虚無の顔せしチンチラを愛づる娘も媚びるを知らず
宮内翠々
だれかから微光がここにとどくからわれは眼をあく深夜の埴輪
渡辺松男
※( )内は前の語句のルビ
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