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本(漫画)の作品名を詠みこんだ歌
カトリック作家渾身の遺書である『深い河』ひらくけふ安息日
高尾文子
藤田田『成功の法則』熟読せるビジネスマンには見えぬおぢいさん
森川多佳子
北のまど電球色につつまれて読むほの熱く『地下にともる灯』
名嘉真恵美子
コロナ禍で埋め尽くされた一面とマスクをしないいつもの『ののちゃん』
小田切 拓
喫茶室に『カラマーゾフ』をひとり読む机の向かひに逝きしおとうと
軽部敬子
みなかみの宿に雨降り松男氏の『雨(ふ)る』を開けばいたく染み入る
高木範子
気を引き立てて読む『にごりえ』の句読点うねりに竿さす波間に漂ふ
大島克予
女たちの怨磋の声のきしきしと漏れくる『♯駄語辞典』の厚み
松村由利子
『かわいそうなぞう』とう絵本の虚偽深し泣ける話に弱きわれらは
奥山 恵
フクシマは「老人と海」のカジキなり骨のみとなり放置さるるか
伊藤眞二
※ ( )内は前の語句のルビ
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