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不可思議な世界に迷い込んでしまいそうな歌を選びました。
(碧野 みちる 選)
明けたればあぢさゐは地にみちみちて肉親たちの茶碗の音す
日高堯子
赤き鳥居いくつくぐりてわがからだ夏の臓腑のうづまきやまず
坂井修一
キーボード叩き続けてこぼしゆく繋がらなかった母音と子音
遠藤由季
咲きのぼる立葵のみち亡き夫はいつも早足にふりむかず行く
佐怒賀弘子
天の川のつめたさを言ふひろさ言ふ二人は二人のふりするふたり
上條素山
ごめんなさい小さな嘘をつきました気休めだとは知る風信子
岩本幸久
駄々茶豆は炊き込みご飯にうもれつつこの世の果てを見たような色
谷川保子
荒川の闇叢に鳴る鬼胡桃が振り落とすのは仮果(かか)だけぢやない
倖田祐水
梅の実は六月まこと落ちやすし日々のもろ手を満たしては捨つ
馬場あき子
白瓜や茗荷のすずしいひかりある夏の厨に祖母は泣かざり
米川千嘉子
※( )内は前の漢字のルビです。
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