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みじかうた測定器に入れONにする揺れる助動詞動かぬ動詞
佐藤聞多
腰痛め食事もベッドで摂る母が曾孫の前では起きて歩ける
柳 秀子
乗り込みてひたすら携帯みる母を幼子三人じつと見上ぐる
有働克子
家族連れ老舗寿司屋のカウンター「回つてないの」と幼子は問ふ
松澤龍一
台所に「八海山」が二本ありこれに勝れる幸せはなし
富田幸雄
居眠りて妻の帰りを待つゆふべ燗かビールかかんがへてゐる
加藤裕司
革命歌流れることなく怒りさえみえぬ連合四月のメーデー
藤岡成一
古代史の舌噛むような名は覚えゴミ回収日今朝も問う夫
石川りつ子
「ミサイル」も「原発」も細く切り裂いてうずらの巣に敷く土曜日の朝
森本いぶき
われと寝る犬は人なるこころ持ち犬にもなれる姿を持てる
塚本博一
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わたしの胸に抱かれて遺影がのぼりゆく坂道桜が咲いていますよ
中津昌子
一万個生りても鳥にはやるまいとネットに覆うさくらんぼの木
徳力聖也
たえきれぬことはなにかと問うひとへカタカナになるふるさとの名を
上石隆明
鳥たちが一瞬のちの静寂のために鋭く喉を震わす
辻 聡之
赤い旗プラットホームに振りたくてたまらなくなる私はここだ
柴崎宏子
あおやぎの小柱このむ母なりき欲なきゆえにみじかく生きぬ
横山充代
教育のまつたきつとめ山を出でよきかな子らの還らぬことは
寺井 淳
からだから逃げたい水が降りやまぬ雨に応へて窓辺に寄りぬ
尾﨑朗子
入浴中にかかる電話を子機に受く声も裸になってうらうら
内田いく子
左腕に鎌すべらせて産毛まで切れると父は得意気なりし
山本フサ
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